「質問主意書」は、国会法74条に規定された両院議員が政府に対して書面を持って行う質問です。
 国会開会中にしか提出できないため、12月9日に閉幕した臨時国会への提出は時間切れのためできませんでした。
 次期通常国会開会後速やかに提出予定ですが、提出したものが正式な内容であって、これはまだ「案」です。
 多くの皆様に問題意識を共有して頂くために、未定稿ですがウェブにアップします。
 原文は縦書きのため、読みづらい部はご了承ください。

 ご意見、コメントは、何なりと問い合わせフォームでお寄せください。



田村義雄駐クロアチア日本大使によるセクシャルハラスメントまたは婦女暴行行為に関する質問主意書(案)

提出者 衆 議 院 太 郎

提出者 参 議 院 太 郎


 クロアチアは、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国から独立を果たし、旧ユーゴスラビア紛争という苦難の歴史を持つ、アドリア海に面する、国立公園やユネスコ歴史遺産に富んだ美しい国である。

 クロアチアは今般の東日本大震災に際して、被災した宮城県仙台市内四つの小学校の六年生二五人を、「被災地の子どもたちを癒やし、夢を与えたい」として政府として正式に招待し、現地の子どもたちと交流したり、世界遺産を見学したりし、充実した旅を経験したと聞く。
 滞在中はヤドランカ・コソル首相の訪問を受け「日本は混乱から立ち上がれる強い国です」と激励された。

 紛争の苦難を経験したにも関わらずこのような心温まる対応をしたクロアチアに、我が国の特命全権大使として赴任している、田村義雄大使(以下、田村大使と言う。)が、現地職員のクロアチア人女性をセクシャルハラスメントまたはパワーハラスメントまたは婦女暴行を行ったと報道された(以下、今般の事案という。)。

 報道の真偽はともかく、同趣旨の疑惑をもたれた段階で大使失格である。
 それにも関わらず、外務省は大使を日本に帰国させ事情聴取したにも関わらず、そのまま任を解くことなく、大使の職に留まらせている。

 このような状態は、被害者女性の人間としての尊厳と心を大きく傷つけ続ける二次被害を生むのみならず、我が国がこういったハラスメントに寛大であるというメッセージを、公職者のハラスメント行為に厳しい欧州諸国のみならず国際社会に広く宣伝することは著しく我が国の国益を損ねるものであり、このような破廉恥行為を看過することはできない。

 駐クロアチア初代日本大使であった故大羽奎介大使は、クロアチア並びに旧ユーゴスラビアを愛し、とけ込み、亡くなった後でセルビア、ベオグラードの墓地に埋葬された。その碑文には、「自らの国よりこの国を愛した」と書かれていると聞く。
 このような人格も経歴も備えた者こそ、特命全権大使に値すると考える。

 そういう観点からは、田村大使は不適格者そのものであり、被害者のクロアチア人女性の著しい屈辱と耐え難い苦痛を想像すると著しく心が痛む。

 特命全権大使とは、天皇の信任状を持参し、日本国の代表として接受国に赴任する者であり、もはやその信任には耐えないと考え、日本とクロアチアとの正常な外交関係の回復と我が国の国益の保持に資するため、以下質問する。

一、田村大使は、今般の事案が明らかになった後に、日本に帰国しているか。帰国していた期間はいつか。複数回であれば、それら全てを答えよ。

二、田村大使が帰国した理由はなぜか。複数回であれば、それぞれに理由を答えよ。

三、田村大使が帰国して、事情聴取等はいつ、どこで、どのように行われたか。日時、回数、場所等を明らかにせよ。

四、三の録音または録画は残されているか?残されている場合は、外務省のどの課が保管しているか、明らかにせよ。

五、三のメモは残されているか?残されている場合は、外務省のどの課に残されているか、明らかにせよ。

六、この事情聴取の目的は、どういう事実を明らかにするためのものだったのか、明らかにせよ。

七、三の事情聴取を行った外務省職員責任者と、事情聴取に同席した者は誰であったか、全て職名を明らかにせよ。

八、事情聴取の内容は、政務三役に説明などを行ったか。行ったとすると、行った外務省職員は誰であって、説明を聞いた政務三役は誰か明らかにせよ。
 その説明が行われた日付、場所も明らかにせよ。

九、八で行われた説明の内容を詳細に明らかにせよ。

一〇、外務省の査察官が在クロアチア大使館に赴き、査察を行ったのは事実か。事実であれば、査察の趣旨、査察官の氏名と査察のために出張した期間を明らかにせよ。

一一、一〇の査察の結果何が判明したのか、明らかにせよ。

一二、一〇の査察によって、田村大使の飲酒運転が判明したとのことだが、事実か。クロアチアの警察機関の捜査を外交特権を理由に拒否したのは事実か。
一三、今般の事案は、田村大使が現地職員のクロアチア人女性に何かをした行為が端緒となっている。その行為とは何か、明らかにせよ。

一四、今般の事案によって、被害にあったクロアチア人女性に対して、職に安心して留まれるような措置、何らかの金銭的補償や名誉回復措置、カウンセリング等の措置は外務省によって講じられたか。その有無を詳細に明らかにせよ。
 また、もし措置等が講じられていない場合は、今後講ずるべきと考えるがどうか。

一五、今般の事案によって、被害にあった女性は、風評や噂などによる二次的な精神的被害を受けたと思料する。
 その認識を明らかにせよ。
 また、それらの二次的被害を防止するための措置を外務省は講じたか、明らかにせよ。

一六、日本国憲法施行以降、過去に日本の特命全権大使が今般の事案のような疑惑または実行行為、刑事事案等によって解任された事案はあるか。あるとするとその全ての解職日時、解職された者の氏名、職名、解職理由を明らかにせよ。

一七、特命全権大使が、接受国の元首に対して、日本の天皇から持たせる信任状というのはどういう趣旨の書面か。

一八、田村大使が現在置かれている現状は、天皇の信任に値するものか見解を明らかにせよ。

一九、以上のような状況を勘案すれば、田村大使を即刻解任させ、懲戒処分を課すべきと考えるが、見解を明らかにせよ。

二〇、初代駐日クロアチア大使であった、アンジェリコ・シーミッチ大使は、日本人職員への性的嫌がらせによって解任されたと聞く。クロアチア政府の解任の理由を承知しているか。承知していれば、その概要を明らかにせよ。

二一、田村大使の財務省任官以降、大使就任までの主な経歴を明らかにせよ。

二二、こういった行為には、常習性が認められるのが学問的知見である。過去に同様の行為があった蓋然性が思料される。田村大使の財務省、環境省在任当時、同様のセクシャルハラスメント、パワーハラスメント行為等の有無を明らかにせよ。

二三、クロアチア語で「Jevem te」とはどういう意味か。この言葉はクロアチア国民から田村大使、なかんずく日本国民に向けられたと仮定すると適切な用語か、見解を明らかにせよ。

二四、こういった資質に著しく欠ける大使を任命することは、我が国の国益を著しく損ねるものである。大使になる者の資質の向上と、今般の事案と同様の過ちを防止するための再発防止施策を明らかにせよ。

 右、質問する

衆議院議長 横 路 孝 弘 殿

参議院議長 平 田 健 二 殿